日本企業には投資対象として、魅力的な企業がたくさんあるといわれています。その魅力的な企業の実態は、多くは海外にあると考えられています。
1990年代半ば以来、日本企業の国内事業活動は停滞していますが、海外活動は大きく成長しています。日本企業の売上高や付加価値は横ばいですが、海外投資によるリターン分により、営業外収益や当期純利益が大きく増加しています。
海外生産比率、海外売上高比率の推移

(注) 各種指標の算出方法 (いずれも連結ベース) ・海外売上高比率 = 海外売上高 / (国内売上高 + 海外売上高) ・海外生産比率 = 海外生産高 / (国内生産高 + 海外生産高)
(出典)株式会社国際協力銀行 企画部門 調査部 「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告 ー 海外直接投資アンケート結果」より
1980年代後半から上場企業のうち、海外現地生産を行う企業の割合は増加し、2013年には71.6%となりました。2017年には加工型製造業に絞っていえば80.8%となりました。
上場企業の製造業現地法人の海外生産比率は1987年には2%程度でしたが、2024年度には23.4%となりました。加工型製造業では33.6%、輸送用機械の分野に絞っていえば48.9%となっています。
現地および進出先近隣国の需要が旺盛で、今後の拡大が見込まれています。製品の製造、加工に必要な原材料を現地で調達することで輸送コストを削減することも可能となっています。(出典)内閣府 経済社会総合研究所
大企業の輸出事業の多くが海外事業に置き換わり、日本企業の国内事業は停滞していますが、海外事業は大きく成長しています。海外現地生産では雇用されているのはほとんどが現地人です。生み出された付加価値(GDP)は現地国に計上されます。海外事業での利益に対する税金も現地国に納税されます。これだけ成長している海外事業ですが、国内経済にはそれほど寄与していません。海外事業は国内の付加価値向上には寄与しない、国内経済とは切り離された活動です。国内市場を見れば人口の減っていく日本ですが、海外も含めて考えれば市場は大きく広がっているといえます。
2021年以来、米国でのインフレ→米国金利の上昇→円安ドル高→輸入物価上昇を通じた日本へのインフレの波及がありました。マクロ経済の混乱の起点が米国のインフレにあったので、混乱の収束は為替レートおよび日本の輸入物価につながります。米国の政策金利の引き下げへの転換は、インフレ鎮静化の流れを背景としています。円ドルの金利差の縮小で円安が修正されれば、日本の輸入物価の上昇も抑えられる可能性があります。
海外の経済状況をけん引する米国の政策変更は資産市場、および景気循環を通じて日本に波及します。日本は常に海外の影響を受けざるを得ませんので、海外の経済指標から目を離すことはできません。
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