株式市場が値上がり、あるいは値下がりをすることで、最適なポートフォリオのバランスは崩れます。
値上がりした資産を売り、または値下がりをした資産を買い増すことで、最適な資産配分比率に修正します。長期の資産運用で着実な成果を出すためには、資産の配分比率を調整するポートフォリオのリバランスが重要です。
価額が上がった資産を売り、下がった資産を買うのは、投資対象を安く買って、高く売ることにつながります。長期的に繰り返せば、運用成績が安定します。
資産配分を自ら決めた割合で維持することで、自らが想定する範囲の安定した運用成果になります。リバランスは相場変動などで変化した、ポートフォリオの資産配分比率を調整し、当初の最適な資産配分比率に修正することです。
リバランスするのは景気循環で、好況→後退→不況→回復という4つの局面が、順番に繰り返し現れると考えられるからです。この点は、「どうして景気循環の波を乗り越え、投資を継続するのか?」のブログを参照して下さい。
好況→後退→不況→回復の4つの景気循環局面で、株式市場は上昇あるいは下落の値動きを繰り返すと考えられます。
景気循環と定年退職後のリバランスの必要性
(出典)ウキペディア百科事典 景気循環
景気循環の回復→好況から景気の山へと向かう局面では、株式市場は上昇すると考えられます。株式市場の上昇につれて、ポートフォリオの株式の資産比率は上昇します。相対的に割合が大きくなった株式資産の一部を売却し、安全資産を購入して比率を元に戻します。
株式市場の上昇により配分比率に差異が生じた際には、景気の好況局面が継続していたとしても、ルールに従いリバランスします。リバランスは価値が上昇した資産の利益を実質的に確定し、ポートフォリオの資産価値の変動リスクを抑える効果があります。
景気循環からは、回復→好況→景気の山を経て、後退→不況→景気の谷へ向かうことが考えられます。景気循環の後退→不況→景気の谷へ向かう変遷に備えて、株式への比率を引き下げることで株式市場の下落の影響を緩和できます。
リバランスを行い株式への配分比率を元の水準に低下させても、株式市場の下落の影響を避けることはできません。景気はどの程度落ち込むものなのかは、過去の景気後退局面では、落ち込みの程度はそれぞれバラバラです。
そこで、株式市場が下落したことで、株式への配分比率が一定以上低下した場合は、リバランスして配分比率を元に戻します。景気の谷を脱して、景気の回復→好況→景気の山へ向かう過程で、株式市場の上昇が期待できます。リバランスを行うことで、景気循環を考慮しながら、自らのリスク許容度に沿った運用が可能となります。
景気循環にあらわれる好況並びに不況が繰り返される中で、長期的に右肩上がりに経済が成長しています。長期投資の際にルールに従ってリバランスすることは、最適化されたリスク許容度で運用するための必要なメンテナンスです。
新NISAで、リバランスを行う
株式市場が上昇し、リバランスのルールに従って株式を売却して、新NISAの非課税保有限度額に空きが出た場合を想定します。
新NISAでは売却により減少した非課税投資枠を、再利用することができる仕組みが採用されています。NISA口座で保有する投資信託等を売却した場合、購入した時の買付額分だけ非課税保有額が減少し、再利用が可能となります。非課税投資枠の空いた部分を再利用して、新規に投資できるのでリバランスがしやすくなりました。
ただし制限として、年間非課税投資枠である360万円の範囲内でリバランスすることができ、投資配分比率を修正することができます。
リバランスのタイミング
いつのタイミングで、どのようにリバランスするか、自らルールを決めて行わなければなりません。
リバランスには、1つには、毎年1回など一定の期間ごとに行う方法があります。
もう1つは、最初の状態から大きく変動したなどの差異が生じたら行う方法の大きく2つのパターンがあります。
資産配分の実際の運営は、許容乖離幅の設定によることが、一貫性があると考えられます。資産配分比率に一定の差異が生じた場合にリバランスする方法では、資産配分比率の変化に注目する必要があります。
大きなリスクを取るべきではない退職金を含めた運用ですので、ポートフォリオの株式資産への配分比率の変化に注意します。最適なポートフォリオのバランスからリスク資産比率が乖離した場合に、どのタイミングでリバランスを行うかを検討します。
「三割高下に向かえ」
「三割高下に向かえ」という、相場取引における相場格言があります。
(出典)日本証券業協会 相場格言集 株式売買タイミング編
つまり、「3割」というところは、上げるにしても下げるにしても一つの転機になるという着眼点です。株式市場全体を反映する株価指数の動向などから、市場全体の動きを把握することを兼ねています。
株式指数がある出発点から3割以上上昇したところは売りへの転換点、3割以上下落したところは買いへの転換点と目安をつけます。
60代の株式等への最適資産配分比率
(参照)ブログ「定年退職後のリアロケーションのタイミングとは?」
(株式等のリスク資産の比率は「100-年齢」を目安に)を参照。
株式への最適配分比率40%から3割上昇したケース
株式への最適配分比率40%から3割下落したケース
(出典)著者が作成
株式への最適配分比率に3割以上の差異がでた場合に、リバランスするルールを設定した場合で考えます。ルール化されたリバランスの運用方針に従い、最適と判断したポートフォリオの資産配分比率へもどします。年齢が60代の場合は資産配分の比率を、株式資産40%、安全資産60%の比率へ戻します。
定年後の資産運用では、退職金を含めた運用へ変化しますので、リスク資産への配分比率に上限を設定してリスクの軽減を図ります。自らが設定したリスク許容度からみて、最適と判断されたポートフォリオの資産配分比率を維持するためにリバランスを行います。
リバランスを行うことにより、高くなった資産の一部を売る、あるいは安くなった資産を買うことになります。結果的にポートフォリオの長期リターンを高めることになります。
Comments