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定年退職後のリアロケーションのタイミングとは?

執筆者の写真: 山木戸啓治山木戸啓治

更新日:2024年4月25日

リアロケーションとは

これまでの投資方針を見直し、資産配分比率を変更することを、リアロケーションと呼んでいます。

定年退職年齢に達したという区切りは、サラリ―マンにとってepoch-makingな出来事です。人生設計に大きな影響を与える定年退職年齢に到達したなどの、ライフサイクルの変化に合わせてリアロケーションを実施します。

50代までは株式等のリスク資産を中心とした分散投資で、定額購入法を活用し資産形成を継続することが基本と考えられます。

定年退職など自らを取り巻く事情に変化があった場合には、ポートフォリオの資産配分の比率を見直す必要が生じます。定年退職後の資産運用は、リスク許容度(注)の低い退職金を含めた運用に変化します。

(注)投資家にとって許容できる損失の範囲のことで、資産運用に伴い発生する損失をどれくらいまでなら、投資の損失として受け入れられるかを示します。

 定年退職後の年齢に達したことにより、これまでの投資方針を見直すことが必要となるのではないでしょうか。


定年退職後のリアロケーション

定年退職後はリスク資産中心から、安全資産を含めた資産配分にシフトすべき時期に入ったと考えるべきではないでしょうか。

大きなリスクを取るべきではない退職金を含めた運用では、株式等への資産配分比率に上限を設定してリスクの軽減を図ります。株式市場が下落すれば、株式等のリスク資産への配分比率が高い場合は、大きな影響を受けざるを得ません。年齢が高くなるにつれ、運用可能な期間が短くなりますので、損失を挽回するための時間的な余地が足らなくなる場合もあります。将来の金利上昇のリスクに備えて、変動金利の個人向け国債等に分散投資すれば、株式市場の下落の影響を抑えることができます。

ポートフォリオの配分比率を決める目的は、年齢等から導き出した最適なリスク許容度の基で、目標とするリターンを得るためです。最適な資産配分比率を判断する上で、最も重要な要素は年齢と考えられます。働くことができる期間が短くなるにつれて、働くことによって収入を得ることができる人的資産の割合が小さくなります。年齢を重ねるに従い、株式等のリスク資産への資産配分比率を低下させて、安全資産への配分比率を高めることを検討します。


株式等のリスク資産への配分比率は「100-年齢」を目安に

定年後の金融資産のリスク資産と安全資産の配分比率は、どの程度を目安とすべきなのでしょうか。株式等のリスク資産への配分比率は「100-年齢」を目安とする、経験則の判断基準があります。年齢によりリスク資産への配分比率は異なってまいりますので、「100-年齢」で求めた比率を目安としたらいかがでしょうか。

一般的に年齢を重ねるに従って、リスクを許容しづらくなるのは当然のことと考えられます。資産運用においては年齢が上がるほど、リスク資産への投資比率を減らしていくという考え方には合理性があります。定年退職後には年齢を基準に、株式等のリスク資産への配分比率を見直すことが考えられます。


株式等のリスク資産への配分比率

定年退職後には、年齢を基準に株式等のリスク資産への配分比率を見直すことが考えられます。定年退職後のリスク資産への配分比率の目安として60代のケースでは100-60(年齢)=40%が考えられます。
株式等のリスク資産への配分比率

(出典)著者が作成

 定年退職後のリスク資産への配分比率の目安として、60代のケースでは100-60(年齢)=40%が考えられます。

(参照)10年周期の株式配分比率の見直し

100-70(年齢)=30%

100-80(年齢)=20%

100-90(年齢)=10%

100-100(年齢)=0%

 実際に、リスク資産と安全資産との配分比率を決定するためのリスク許容度の問題は、年齢だけで判断できるわけではありません。このほかに、ライフプランニングする上で検討すべき要素を踏まえて、リスク許容度を調整しなければならないこともあります。

自らを取り巻く就労事情、投資可能期間、保有資産、住宅の保有の有無、家族構成、家族を含めた健康状態等を加えて検討します。


世界の中の日本と考える

日本経済を俯瞰的にとらえると、日本企業は利益の大半を海外事業から稼いでいると考えられます。世界経済の牽引役となる米国を含めてOECD諸国の経済動向に、日本は大きな影響を受けていることがわかります。多くの企業の収益動向は、米国を中心とする海外の景気循環に連動すると考えて差し支えないと思われます。
GDP growth (annual %)

(出典)THE WORLD BANK IBRD・IDA GDP growth (annual %)より著者が作成

 日本経済を俯瞰的にとらえると、日本企業は利益の大半を海外事業から稼いでいると考えられます。世界経済の牽引役となる米国を含めたOECD諸国の経済動向に、日本は大きな影響を受けていることがわかります。多くの企業の収益動向は、米国を中心とする海外の景気循環に連動すると考えて差し支えないと思われます。

 また日本の景気循環の景気後退局面のほとんどは、米国の景気動向など海外からのショックをきっかけとして生じています。


「米国の景気循環、拡大と縮小」からみるリアロケーションのタイミング

全米経済研究所のデータから景気循環の「景気の山から次の景気の山」までの周期は、1945年以降では平均75カ月(6年3カ月)です。
米国の景気循環、拡大と縮小のサイクル

(出典)全米経済研究所(National Bureau of Economic Research)米国の景気循環の拡大と縮小(US Business Cycle Expansions and Contractions)より著者が作成

 日本企業を全体でみると利益の大半を、海外事業から稼いでいると考えられます。多くの企業の収益動向は、米国を中心とする海外の景気循環に連動すると考えて差し支えないと思われます。日本の景気循環の景気後退局面のほとんどは、米国の景気動向など海外からのショックをきっかけとして生じています。

 全米経済研究所のデータから、景気循環の景気の山から次の景気の山までの周期は、1945年以降では平均75カ月(6年3カ月)です。

 「米国の景気循環の拡大と縮小」のデータから、景気の山から次の景気の山までの周期の中で、長いものから順にみます。

 一番長い周期は、2007年12月の景気の山から2020年1月の景気の山までの146カ月(12年2カ月)です。

 二番目に長い周期は、1990年7月の景気の山から2001年3月の景気の山までの128カ月(10年8カ月)です。

 三番目に長い周期は、1960年4月の景気の山から1969年12月の景気の山までの116カ月(9年8カ月)です。

 米国の景気循環の周期をみますと、大まかにいえば10年以内に1度は景気の山が出現しています。

 一方、1945年以降のアメリカの景気循環の中で、景気の山から景気の谷までの景気後退期間は、13回ありました。景気の山から景気の谷までの景気後退期間は、1945年以降の13回を平均すると10.3ヵ月と、1年にも満たない計算になります。景気の山から景気の谷までの景気後退期間が、1年を超えたのは1945年以来3回となります。1945年以降の13回の景気後退期間の中で、10回は1年未満にとどまります。

 世界に大きな影響を与えた2回のオイルショックでも、景気の山から景気の谷までの景気後退期間は16ヶ月です。

 景気の山から景気の谷までの景気後退期間が一番長かった、サブプライム危機・リーマン・ショックの場合でも18ヶ月です。

 平均10.3ヵ月しかない景気の山から景気の谷までの景気後退期間を経た後は、株価は底値をつけて上昇に転じています。

 10年以内を目処にリアロケーションを実施すれば、相場変動の影響による投資成果の偏りを抑えることができる可能性があります。景気循環に合わせて10年以内を目処に、リアロケーションを実施することが考えられます。

 

景気循環の周期とリアロケーション

 景気循環の中で主循環と呼ばれるものは、設備投資の過剰な部分を調整する働き、あるいは足りない部分を補強する働きが引き起こします。経済活動の拡張と収縮の循環という考え方です。

 企業の設備は耐久年数が10年程度であるため、新しい設備を購入する需要とそれによる景気は約10年で循環するというものです。企業の設備や機材の寿命が約10年周期であることから、それに合わせた設備やメンテナンスに関連する企業への投資が発生します。それによる労働需要も増え、関連需要が増えることから、景気に大きく影響を与えると考えられています。景気循環の主循環とよばれる周期からすると10年程度をへて、景気の山から次の景気の山が出現すると考えられています。

 景気循環の好況局面である景気の山に重ね合わせて、10年以内を目処にリアロケーションすることが考えられます。60代以降は米国の景気循環の周期も考慮し、10年以内を目処に株式等の配分比率を、10%ずつ見直してはいかがでしょうか。

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