米国失業率(Civilian unemployment rate)の推移

(出典)労働省労働統計局(U.S. Bureau of Labor Statistics )米国雇用統計失業率
米国雇用統計は、労働省労働統計局(U.S. Bureau of Labor Statistics )が雇用情勢を示すために毎月発表する指標です。グラフに示されたグレイの網掛けの部分はNational Bureau of Economic Research(国家経済調査局)が公表した不況期を表しています。毎月米国雇用統計の内容が注目される理由として、アメリカで雇用情勢が個人消費に直結する点が挙げられます。アメリカの個人消費は、同国のGDPの約7割を占めているため、雇用状況によって経済が左右されやすくなっています。
雇用の状況によっては米国市場のみならず、日本の輸出並びに為替市場にも影響を与えることがあるため、注視しなければなりません。
米雇用統計における失業率とは、アメリカ国内の失業者数を労働人口で割って算出し、割合と増減をまとめたものです。失業者とは、現在就業していなくて16歳以上の働く意志を持つ人です。労働力人口は失業者数と就業者数を合わせて算出します。
米国の雇用統計の失業率では、4週間以上職探しをしていない人を労働力人口に含めません。このため、職探しをあきらめてしまう人が増加した場合、失業率の分母が小さくなって失業率が改善してしまう可能性もあります。
長期化した高金利政策がどのように景気にブレーキをかけていくのかについては、ハッキリ見通せない部分があります。業績悪化の際に取られる従業員を一時的に解雇するレイオフが急増するのは景気後退期に入ってしばらくしてからになります。失業率は経済動向が変化してから、一定の時間が経過した後に遅れて変動するという特徴があります。
失業率からみる完全雇用の水準とは

(出典)Unemployment Rate, Percent, Monthly, Seasonally Adjusted
米国の失業率は2023年1月にオイルショック前の1969年以来、53年ぶりの低水準となる3.4%を記録しました。
2024年5月以来失業率は4%の水準を上回り、11月の雇用統計では失業率は4.2%、12月の失業率は4.1%、2025年1月の失業率は4.0%となっています。
直近3カ月間の平均失業率が過去1年の失業率の最低値を、0.5%超えて上回ると景気後退の始まりを示すという経験則があります。2024年6月~9月に直近3カ月間の平均失業率が、過去1年の失業率の最低値を0.5~0.7%上回り、景気後退に陥る可能性が指摘されました。 完全雇用とは、現行の賃金水準で働くことを望んで、就業の機会を得られない労働者がいない状態です。米国では、失業率が5%を切る水準はほぼ完全雇用といわれます。米連邦準備制度理事会(FRB)では失業率の4%程度が労働市場の長期的な均衡水準とみています。失業率が4%未満であれば完全雇用の状態と考えられています。
FRBの2022年3月からの利上げ開始から2年3カ月たち、失業率は4%を上回る水準へと変化し始めています。FRBはインフレ抑制のために2022年3月から始めた利上げ局面を終え、2024年9月から利下げへと転換しています。
非農業部門全体の求人数とは

(出典)Job Openings: Total Nonfarm, Level in Thousands, Monthly, Seasonally Adjusted
コロナ禍以降の2022年3月に1218万件まで増加した非農業部門全体の求人件数は、2024年10月の784万件、11月の816万件、12月の760万件へと変化しています。コロナ禍前の最高記録である2018年11月の759.4万人程度の水準へと減少しています。
米国の労働参加率とは

(出典)Labor Force Participation Rate, Percent, Monthly, Seasonally Adjusted
就業者および求職者の合計の労働力人口の、生産年齢人口に占める割合を労働参加率と呼んでいます。米国の労働参加率は新型コロナパンデミック以降に2023年8月62.8%まで回復しました。それ以降は、2024年11月62.5%、12月62.5%、2025年1月62.6%と横ばいの状態が継続しています。
スタグフレーションへの懸念とは?
米国では、穏やかなスタグフレーションが始まりつつあるとの懸念もあります。スタグフレーションへの懸念とは、根強いインフレ圧力のもとでインフレと景気停滞が併存する経済状況をいいます。
労働市場の悪化をもたらす極端な移民排斥、中国への制裁関税の大幅な引き上げは穏やかな景気減速につながる可能性があります。関税政策などを懸念して米経済の減速懸念は強まっていますが、雇用情勢が崩れる状況にはなっていません。
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