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新NISAの真価は、なぜ長期投資で活かされるのか?

執筆者の写真: 山木戸啓治山木戸啓治

更新日:3月4日

 取引が集中する株式市場は、多くの情報が反映されて形成されていますが、株式市場は完全には効率的と言い切れないと言われます。人間の心理面からすれば、市場はもっと上がると楽観が行き過ぎたり、逆に悲観一色になったりします。

 歴史を振り返れば、株式市場はバブルの崩壊、それに伴うパニックを繰り返してきました。資金をひとまとめにして投資することなく、投資対象ならびに投資時期を分散することが望ましいとされてきました。その理由は株式および外国為替などの市場の変動を予想することは容易なことではないと考えられてきたからです。

「株式市場は短期的には『投票機』にすぎないが、長期的には『計測機』として機能する」とベンジャミン・グレアム(注)は表現しています。

(注)1929年の米国の大恐慌後に投資理論の基礎を築いた、アメリカ合衆国経済学者「バリュー投資の父」と呼ばれる。

 株式市場は短期的には、投資家による人気投票の場であり、時には行き過ぎもあります。長い目でみれば株価は、企業が稼ぐ利益に沿うように変化し、市場は企業本来の価値を計測するものと考えられています。日々の株価の上げ下げで売買するよりも10年、20年と長い目でみて、企業の成長を投資の成果に取り入れることが重要と考えられます。

 一般的に、資産を大きく増やすためには、20年~30年以上の運用期間が必要と言われます。資産形成を行う際は、20年以上を目安にして考えていただきたいと思います。

長期投資は短期投資とは異なり、目先の動きには注目しません。相場の動きにかかわりなく、投資を継続する点で短期投資とは異なります。


長期投資の効果

  毎月1万円ずつ積み立て、年3%で運用した場合

毎月1万円ずつ積み立て、年3%で運用した場合の長期投資の効果
長期投資の効果

(出典)金融庁ホームページ 資産形成の基本より一部加工して著者が作成(https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/invest/)

長期投資のメリットは、時間をかけて運用することで複利の効果が得やすくなり、リスクとリターンも安定しやすくなることです。初心者が取り組みやすい投資方法といえます。

長期投資は積み立て投資と相性が良く、コツコツと投資を行うことでリスクとリターンを安定させます。長期投資をうまく活用することで、安定した収益の確保が期待できます。


複利の効果

「複利は人類による最大の発明だ。知っている人は複利で稼ぎ、知らない人は利息を払う。(Compound interest is man’s greatest invention. He who understands it, earns it. He who doesn’t pays it.)」。この一言を残したのは相対性理論を発見したアルバート・アインシュタイン博士です。

投資には長期的に行っていくことで、投資資金を運用して得られた利益が、更に運用されて増えていく「複利」の効果があります。複利の効果とは投資などで得た収益を、当初の元本にプラスして運用することで得られる利益を複利と呼びます。複利は利息が利息を生む構図となっています。


長期運用ほど、複利効果は大きくなる

運用利回りが高いほど、運用期間が長いほど複利の効果は大きくなります。「投資期間」と「複利」の効果には関係があり、投資期間が長いほど、複利効果も大きくなる傾向があります。
投資期間と複利効果の関係

(出典)金融庁ホームページ投資の基本より一部加工して著者が作成

運用利回りが高いほど、運用期間が長いほど複利の効果は大きくなります。「投資期間」と「複利」の効果には関係があり、投資期間が長いほど、複利効果も大きくなる傾向があります。投資期間が長いことで、投資による価格変動リスクが小さくなり、安定した収益が期待できます。投資する期間が長ければ長いほど、複利の効果を得やすくなります。リターンが尻上がりに大きくなるため、運用期間をできるだけ長く確保することが大切です。長期投資をうまく活用して、安定した収益の確保を目指します。

将来への資産形成をより有利に行うためには、複利での運用をなるべく早く初めて、長く続けることが重要となります。時を友にして、資産を形成するという姿勢が必要となります。就労を継続し定期的な収入がある場合は、世代を問わず長期積み立て投資を検討していただきたいと考えます。


成長が見込める投資対象に、投資を継続する

技術革新の伸展、市場全体の生産性で経済が成長するイメージ図

  経済活動は、長期的にゆるやかな上昇トレンドの中で、上下変動を繰り返しています。不況から景気の谷を脱すると、生産性の向上を背景に、回復→好況を経て次の景気の山は切り上がる傾向があります。長期的な趨勢として、企業の技術水準は着実に進歩し、企業価値拡大の源泉となる生産性が向上します。
技術革新の伸展、市場全体の生産性の向上で経済が成長するイメージ図

(出典)佐々木宏夫、片岡孝夫、高瀬浩一、谷内祥訓、岩崎繁、岩村夏樹『商業316 ビジネス経済』(実用出版  2014年01月25日発行)を参考に著者が作成

経済活動は、長期的にゆるやかな上昇トレンドの中で、上下変動を繰り返しています。不況から景気の谷を脱すると、生産性の向上を背景に、回復→好況を経て次の景気の山は切り上がる傾向があります。長期的な趨勢として、企業の技術水準は着実に進歩し、企業価値拡大の源泉となる生産性が向上します。

例えば、教育で人的資産が増加すると、費やした労力に比べて、より順調に生産がはかどるようになります。人的資産が世代ごとに向上し、長期的に技術進歩が続きます。企業の従業員の持つスキルが高まると技術進歩も早くなり、導入された新技術への適応も早くなることで生産性が高まります。企業の成長の源泉は、設備の性能が上がったり、仕事のやり方が改善したりするなどして、生産性が上がる技術進歩と考えられます。上場企業の多くには生産性を高め、将来的な株式価値の増加を期待できる仕組みを持つ企業が、少なからず存在すると思われます。長期に成長が見込める世界の株式等の投資対象に、継続的に投資することが重要な選択肢となります。景気循環の複数の波を乗り越えて投資を継続して、世界の経済成長を自らのポートフォリオに取り込むことを考えます。

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