逆イールドとは
債券市場で長期金利の水準が、短期金利を下回る状況を逆イールドと呼んでいます。米国債券市場では2022年11月から約2年間、10年国債と3カ月物国債の利回りの逆イールドが継続しました。2024年12月に景気後退の予兆とされる逆イールドの状況を脱したものの、2カ月ぶりの2月26日から逆イールドが生じています。関税の強化策は輸入品の価格上昇を通じて、物価を押し上げる危険があります。関税強化策が景気悪化とインフレが共存する、スタグフレーションを招かないか懸念されます。
10年国債利回りと3カ月物国債利回りの金利差

グラフのグレイの網掛けの部分は、景気後退局面をあらわしています。
債券は満期までの期間が長ければ、利回りが高い状態であることが一般的です。元本回収に時間がかかる長期債ほど、経済や物価の変動リスクは増加します。
返済までの期間が長いほどリスクがあるので、投資家は元本回収に時間がかかる長期債ほど高い利回りを要求します。
インフレを抑えるために、政策金利を高く保つ金融引き締め局面では、政策金利の上昇の影響で短期債の金利は上昇します。金融引き締め局面が長期化すると、将来の景気減速を見越して長期金利は低下傾向となります。長期金利の水準が短期金利を下回る、逆転した状況が逆イールドとよばれる現象です。
これまで1945年以降で逆イールドの期間が最長だったのは、1978年8月から80年5月までの1年8カ月でした。第2次石油危機の影響で、深刻なインフレが起きていためボルカーショック(注)と呼ばれる急激な金融引き締めを行った時期でした。
(注)ポール・ボルカー元FRB議長が、アメリカを襲っていた高インフレを、政策金利を大幅に引き上げてインフレを封じ込めました。
リーマン・ショック前の引き締め局面では、2006年8月~2007年3月に8カ月間逆イールドが生じました。その後2007年12月末に景気後退局面に入り、2009年6月まで18カ月間にわたり景気後退局面が継続しました。
いずれも景気悪化を受けて、FRBは政策金利の引き下げに転じて、3カ月物国債利回りが低下することで逆イールドは解消されました。過去の例では、逆イールドという状況が生じて1年~2年後には、景気が後退して株安が生じていました。1945年以降では、逆イールドの局面は11回ありましたが、うち10回は景気後退と株安を伴いました。従って逆イールドという状況は、景気後退と株安の予兆とされることがあります。
逆イールドの期間が最長となったのは、軟着陸(ソフトランディング)が実現できていないことが原因でした。軟着陸とは、景気が底堅いままインフレが収束し、FRBが政策金利を引き下げることで逆イールドが解消するというシナリオです。
しかし、米国景気が底堅いだけインフレ圧力が根強く、インフレ率が目標に収まりませんので、高水準の政策金利が続いています。FRBが期待する軟着陸に向かう確証は得られていません。
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