年金生活期の家計収支の実態は
- 山木戸啓治
- 3 日前
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更新日:2 日前
令和6年全国家計構造調査から見る年金生活期の家計収支
最初に、全国家計構造調査の「夫婦高齢者無職世帯」の家計収支から、月間の実収入および実支出を確認します。
夫婦高齢者無職世帯の実収入と実支出
世帯主の平均年齢78.2歳

(出所)令和6年全国家計構造調査 家計収支に関する結果
結果の概要 3 高齢者世帯の収入及び支出より作成
世帯主の平均年齢が78.2歳という点から考えますと、団塊の世代の皆様がデータの中心を占めていると考えられます。
夫婦高齢者無職世帯の家計収支から、実収入は271,665円、実支出は278,136円で、その差額から月間家計収支は6,472円の赤字です。 内訳をみますと公的年金などの社会保障給付は、月額247,574円で実収入に占める割合は91.1%です。
年金生活期を30年間として、月間の平均不足額6,472円を基に計算しますと、不足額のトータルは240万円程度となります。
夫婦高齢者無職世帯の実収入と実支出から見ますと、年金生活期の家計収支に大きな不安を抱くようなものは有りません。
65歳~74歳の高齢者無職単身世帯の実収入と実支出

(出所)令和6年全国家計構造調査 家計収支に関する結果
結果の概要3 高齢者世帯の収入及び支出より作成
高齢者無職単身世帯の家計収支は、「65歳~74歳」と「75歳以上」の2つのライフステージに分けて表示されています。
65歳~74歳のライフステージの高齢者無職単身世帯の家計収支から、実収入は157,718円、実支出は188,013円です。
この差額分から平均月間収支は、30,295円の赤字となっています。
収入の内訳をみますと、公的年金などの社会保障給付は月額135,278円で、実収入に占める割合は約85.8%となっています。
65歳~74歳の10年間の家計収支の差額分月額30,295円を基に計算しますと、不足額は364万円程度となります。
75歳以上の高齢者無職単身世帯の実収入と実支出

(出所)令和6年全国家計構造調査 家計収支に関する結果
結果の概要 3 高齢者世帯の収入及び支出より作成
75歳以上の高齢者無職単身世帯の家計収支から、実収入は155,129円、実支出は148,268円です。この差額から平均月間収支は、6,861円の黒字となっています。
収入の内訳をみますと公的年金などの社会保障給付は、月額141,100円で実収入に占める割合は約91%となっています。
75歳以上の高齢者無職単身世帯の家計収支からは、高齢期の生活費に大きな不安を抱くようなものは有りません。
高齢者無職単身世帯の家計収支については、「65歳~74歳」と「75歳以上」のライフステージに分けて分析しています。
健康で自律的な活動的な生活を送られている方が多い「65歳~74歳」のライフステージでは実支出が大きくなりがちです。年金収入だけでは賄えない支出が発生するケースが、生じる場合もあると考えらえます。
「75歳以上」のライフステージの実支出は、なだらかに減少し年金生活という身の丈に合った水準に落ち着く傾向があります。このように年金生活期をひとまとめにして一律に考えることには、無理があると考えられます。
「65歳~74歳」と「75歳以上」のライフステージを合わせますと、年金生活期の家計収支にそれほど大きな不安を持つ要素はありません。
ところが、マスコミ報道では「退職後には公的年金の他に、5千万円程度か、それ以上の老後資金が必要です」という報道を行っています。その根拠はどこにあるのでしょうか。
生命保険文化センターの「生活保障に関する調査」からその点を探ってみます。
生命保険文化センターの生活保障に関する調査
生活保障に関する調査では、退職後の老後生活に関する意識の分析を行っています。
夫婦2人で老後生活を送る上で必要と考えられる最低日常生活費と、経済的にゆとりある老後生活を送るための費用を調査しています。生活保障に関する調査を基に、ライフコースごとに年金生活期の30年間のゆとりある老後生活を送るための費用を把握します。
共働き世帯の年金生活期の30年間のゆとりある生活費

(出所1) 生命保険文化センター「令和4年生活保障に関する調査」における世帯の年収別1000万円以上の「ゆとりある生活費」の平均額44.7万円から引用した。
(出所2)厚生労働省 令和7年度の年金額改定について 多様なライフコース応じた年金額ー令和7年1月24日
厚生年金期間中心の男性の老齢基礎年金月額を加算した男性の平均年金月額約173,457円および厚生年金期間中心の女性の老齢基礎年金月額を加算した女性の平均年金月額約132,117円の合計額から共働き世帯の夫婦合計の平均年金受給額約30.6万円と推定した。
共働き世帯の公的年金への、経済的にゆとりある老後生活を送るための上乗せ額を把握します。
試算例Ⅰでは、共働き世帯の年金生活期の30年間の、経済的にゆとりある老後生活を送るための費用を試算しました。
(試算例Ⅰ)共働き世帯の夫婦2人分の収入の合計が、世帯年収1000万円以上の層の、経済的にゆとりある老後生活を送るための費用、平均月額44万7千円のケースで試算します。
共働き夫婦世帯の経済的にゆとりある老後生活を送るための費用は、
平均月額44万7千円-共働き世帯の公的年金の平均月額約30.6万円=公的年金への平均上乗せ額は、月額約14万1千円となります。
共働き夫婦世帯の平均月額費用、44万7千円を基にすると、30年間の公的年金へのゆとりのための上乗せ額は、14万1千円×12か月×30年の合計で、約5,076万円となります。
片働き世帯の年金生活期の30年間のゆとりある生活費

(出所1) 生命保険文化センター「令和4年生活保障に関する調査」における本人年収別700万円~1000万円未満の「ゆとりある生活費」の平均額39.8万円から引用した。
(出所2)厚生労働省 令和7年度の年金額改定について多様なライフコース応じた年金額ー令和7年1月24日
厚生年金期間中心の男性の老齢基礎年金月額を加算した男性の平均年金月額約173,457円および国民年金(第3号被保険者期間)中心の女性の平均年金月額約76,810円の合計額から共働き世帯の夫婦合計の平均年金受給額約25万円と推定した。
片働き世帯の公的年金への、経済的にゆとりある老後生活を送るための上乗せ額を把握します。試算例Ⅱでは、片働き世帯の年金生活期の30年間の、経済的にゆとりある老後生活を送るための費用を試算しました。
(試算例Ⅱ)片働き夫婦世帯の経済的にゆとりある老後生活を送るための費用、平均月額38万9千円のケースで試算します。
片働き夫婦世帯の経済的にゆとりある老後生活を送るための月額費用、38万9千円-片働き世帯の公的年金月額25万円=年金への平均上乗せ額は月額約13万9千円となります。
片働き夫婦世帯の平均月額、38万9千円のケースを基にすると、30年間の公的年金への「ゆとりのための上乗せ額」は13万9千円×12か月×30年の合計で約5,004万円となります。
単身世帯の年金生活期の30年間のゆとりある生活費

(出所1) 生命保険文化センター「令和4年度 生活保障に関する調査」におけるライフステージ別未婚世帯の「ゆとりある生活費」の男性の平均額35万円から引用した。
(出所2)厚生労働省 令和7年度の年金額改定について 多様なライフコース応じた年金額ー令和7年1月24日 厚生年金期間中心の男性の老齢基礎年金月額を加算した男性の平均年金月額約173,457円から推定した。
単身世帯の公的年金への、経済的にゆとりある老後生活を送るための上乗せ額を把握します。試算例Ⅲでは、片働き世帯の年金生活期の30年間の、経済的にゆとりある老後生活を送るための費用を試算しました。
(試算例Ⅲ)単身世帯の経済的にゆとりある老後生活を送るための費用、平均月額36万1千円のケースで試算します。
単身世帯の経済的にゆとりある老後生活を送るための費用、平均月額36.1万円-単身の場合の公的年金月額約17.3万円で、年金への上乗せ額は、月額約18.8万円となります。
単身世帯の月額36.1万円のケースを基にしますと、30年間の公的年金へのゆとりのための上乗せ額は、18.8万円×12か月×30年の合計で、約6,768万円となります。
老後生活を送る上で必要と考えられる最低日常生活費用に加えて、経済的にゆとりある老後生活を送るための費用をまかなうためには、公的年金に加えて5千万円からそれ以上の資金が必要となる場合もあるようです。
生命保険文化センターの生活保障に関する調査にある、経済的にゆとりある老後生活を送るための費用は、公的年金だけではまかなえないことは当然のことではないでしょうか。
公的年金は老後生活の基礎的な生活を支えることを目的とした制度です。経済的にゆとりある老後生活を送るための費用まで支給できるものではありません。
生命保険文化センターの生活保障に関する調査から、最低日常生活費用と経済的にゆとりある老後生活を送るための費用との間には大きな幅があることが分かりました。
以前の中流家庭というような、唯一の正解という平均的なモデルというものは存在しなくなっています。
個人ごとに最低日常生活費用に加えて、経済的にゆとりある老後生活をおくるための費用を想定する必要があります。ゆとりある豊かな年金生活期を実現するためには、個人ごとの対策が求められているということではないでしょうか。

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