退職後の年金生活期の家計収支
- 山木戸啓治
- 3月25日
- 読了時間: 8分
更新日:4月12日
全国家計構造調査から見る、年金生活期の家計収支
最初に、全国家計構造調査の「夫婦高齢者無職世帯」の家計収支から、
月間の実収入および実支出を確認します。
夫婦高齢者無職世帯の実収入と実支出
世帯主の平均年齢78.2歳

(出所)令和6年全国家計構造調査 家計収支に関する結果
結果の概要 3 高齢者世帯の収入及び支出より作成
世帯主の平均年齢が78.2歳という点から考えますと、団塊の世代の皆様がデータの中心を占めていると考えられます。
夫婦高齢者無職世帯の月間家計収支から、実収入は271,665円、実支出は278,136円で、その差額から家計収支は6,472円の赤字です。
内訳をみますと公的年金などの社会保障給付は、月額247,574円で実収入に占める割合は91.1%です。
年金生活期を30年として月間の平均不足額6,472円を基に計算しますと、不足額の合計は233万円程度となります。
夫婦高齢者無職世帯の実収入と実支出から見ますと、年金生活期の家計収支に大きな不安を抱くようなものは有りません。
世帯主が65歳以上の無職夫婦世帯の、月間の消費支出の推移について

(出所)令和6年全国家計構造調査 家計収支に関する結果
結果の概要 3 高齢者世帯の収入及び支出
図Ⅱ-2 夫婦のみの世帯(世帯主が65歳以上、有業者のいない世帯)の 世帯主の年齢階級、
費目別消費支出より作成
上記の図表では世帯主が65歳以上の夫婦無職世帯の消費支出を、世帯主が「65~69歳」、「70~74歳」、「75歳以上」に分けて比較しています。
平均消費支出は、「65~69歳」で月間305,381円、「70~74歳」で月間268,787円、「75歳以上」で月間236,789円となっています。
「75歳以上」の平均消費支出を、「65~69歳」と比較しますと、約78%まで低下しています。
65歳~74歳の高齢者無職単身世帯の、月間の実収入と実支出

(出所)令和6年全国家計構造調査 家計収支に関する結果
結果の概要3 高齢者世帯の収入及び支出より作成
高齢者無職単身世帯の家計収支は、「65歳~74歳」と「75歳以上」の2つのライフステージに分けて表示されています。
「 65歳~74歳」の高齢者無職単身世帯の月間家計収支から、実収入は157,718円、実支出は188,013円です。
この差額分からみますと、平均月間収支は30,295円の赤字となっています。
収入の内訳をみると、公的年金などの社会保障給付は月額135,278円で、実収入に占める割合は約85.8%となっています。
「65歳~74歳」の10年間の家計収支の差額分月間30,295円を基に計算しますと、不足額は364万円程度となります。
75歳以上の高齢者無職単身世帯の、月間の実収入と実支出

(出所)令和6年全国家計構造調査 家計収支に関する結果
結果の概要 3 高齢者世帯の収入及び支出より作成
75歳以上の高齢者無職単身世帯の月間家計収支から、実収入は155,129円、実支出は148,268円です。この差額からみますと、平均月間収支は6,861円の黒字となっています。
収入の内訳をみると、公的年金などの社会保障給付は月額141,100円で、実収入に占める割合は約91%となっています。
75歳以上の高齢者無職単身世帯の家計収支からは、高齢期の生活費に大きな不安を抱くようなものは有りません。
高齢者無職単身世帯の家計収支については、「65歳~74歳」と「75歳以上」のライフステージに分けて分析しています。
健康で自律的な活動的な生活を送られている方が多い「65歳~74歳」のライフステージでは実支出が大きくなりがちです。年金収入だけでは賄えない支出が発生するケースが、
生じると考えらえます。
「75歳以上」の実支出は、なだらかに減少し年金生活という身の丈に合った水準に落ち着く傾向があります。
このように年金生活期を、ひとまとめにして一律に考えることには無理があります。
「65歳~74歳」と「75歳以上」の年金生活期を合わせてみますと、家計収支にそれほど大きな不安を持つ要素はありません。
生命保険文化センターの生活保障に関する調査
全国家計構造調査のデータからみますと、年金生活期の家計収支に、それほど大きな不安を持つ要素はありませんでした。
ところが、マスコミでは「退職後には公的年金の他に、5千万円程度か、それ以上の老後資金が必要です」という報道を行っています。
その根拠はどこにあるのでしょうか。生命保険文化センターの「生活保障に関する調査」から、その点を探ってみます。
生活保障に関する調査では、退職後の老後生活に関する意識の分析を行っています。
夫婦2人で老後生活を送る上で必要と考えられる「最低日常生活費」と、「経済的にゆとりある老後生活を送るための費用」を調査しています。
生活保障に関する調査を基に、ライフコースごとに年金生活期を30年と仮定して、ゆとりある老後生活を送るための費用を把握します。
共働き世帯の年金生活期の30年間の、経済的にゆとりある生活費

(出所1) 生命保険文化センター「令和4年生活保障に関する調査」における世帯の年収別1000万円以上の「ゆとりある生活費」の平均額44.7万円から引用した。
(出所2)厚生労働省 令和8年度の年金額改定について 多様なライフコース応じた年金額ー令和8年1月23日
厚生年金期間中心の男性の老齢基礎年金月額を加算した男性の平均年金月額176,793円および厚生年金期間中心の女性の老齢基礎年金月額を加算した女性の平均年金月額134,640円の合計額から共働き世帯の夫婦合計の平均年金受給額を 約31.2万円と推定した。
共働き世帯の公的年金への、ゆとりある老後生活を送るための上乗せ額を把握します。
試算例Ⅰでは、共働き世帯の年金生活期の、ゆとりある老後生活を送るための費用を試算しました。
(試算例Ⅰ)共働き世帯の夫婦2人分の収入の合計が、世帯年収1000万円以上の層の、
ゆとりある老後生活を送るための費用を、平均月間44万7千円のケースで試算します。
共働き夫婦世帯の、ゆとりある老後生活を送るための費用は、
平均月間44万7千円-共働き世帯の公的年金の平均月額約31.2万円=
公的年金への平均上乗せ額は、月間約13万5千円となります。
共働き夫婦世帯の平均月間費用、44万7千円を基にすると、30年の公的年金への、ゆとりのための上乗せ額は、13万5千円×12か月×30年の合計で、約4,860万円となります。
片働き世帯の年金生活期の30年間の、経済的にゆとりある生活費

(出所1) 生命保険文化センター「令和4年生活保障に関する調査」における本人年収別700万円~1000万円未満の「ゆとりある生活費」の平均額39.8万円から引用した。
(出所2)厚生労働省 令和8年度の年金額改定について多様なライフコース応じた年金額ー令和8年1月23日
厚生年金期間中心の男性の老齢基礎年金月額を加算した男性の平均年金月額176,793円、および国民年金(第3号被保険者期間)中心の女性の平均年金月額78,249円の合計額から片働き世帯の夫婦合計の平均年金受給額約25.5万円と推定した。
片働き世帯の公的年金への、ゆとりある老後生活を送るための上乗せ額を把握します。
試算例Ⅱでは、片働き世帯の年金生活期の、ゆとりある老後生活を送るための費用を試算しました。
(試算例Ⅱ)片働き夫婦世帯のゆとりある老後生活を送るための費用、平均月間39万8千円のケースで試算します。
片働き夫婦世帯のゆとりある老後生活を送るための費用、
月間39万8千円-片働き世帯の公的年金月額約25.5万円=年金への平均上乗せ額は、
月間約14万3千円となります。
片働き夫婦世帯の平均月間費用、39万8千円のケースを基にすると、30年間の公的年金への「ゆとりのための上乗せ額」は、14万3千円×12か月×30年の合計で、約5,148万円となります。
単身世帯の年金生活期の30年間の、経済的にゆとりある生活費

(出所1) 生命保険文化センター「令和4年度 生活保障に関する調査」におけるライフステージ別未婚世帯の「ゆとりある生活費」の平均額36.9万円から引用した。
(出所2)厚生労働省 令和8年度の年金額改定について 多様なライフコース応じた年金額ー令和8年1月23日 厚生年金期間中心の男性の老齢基礎年金月額を加算した男性の平均年金月額約176,793円から推定した。
単身世帯の公的年金への、ゆとりある老後生活を送るための上乗せ額を把握します。
試算例Ⅲでは、単身世帯の年金生活期の、ゆとりある老後生活を送るための費用を試算しました。
(試算例Ⅲ)単身世帯のゆとりある老後生活を送るための費用、
平均月間36.9万円のケースで試算します。
単身世帯のゆとりある老後生活を送るための費用、
平均月間36.9万円-単身の場合の公的年金月額約17.7万円で、年金への上乗せ額は、
月間約19.2万円となります。
単身世帯の月間費用36.9万円のケースを基にしますと、30年間の公的年金への、ゆとりのための上乗せ額は、19.2万円×12か月×30年の合計で、約6,912万円となります。
老後生活を送る上で必要と考えられる、最低日常生活費用に加えて、
ゆとりある老後生活を送るための費用をまかなう場合を考えました。
そうしたケースでは、公的年金に加えて5千万円からそれ以上の資金が、必要となる場合もあるようです。
経済的にゆとりある老後生活を送るための費用は、公的年金だけではまかなえないことは当然のことではないでしょうか。
公的年金は老後生活の基礎的な生活を支えることを目的とした制度です。ゆとりある老後生活を送るための費用まで支給できるものではありません。
生活保障に関する調査から、最低日常生活費用とゆとりある老後生活を送るための費用との間には大きな幅があることが分かりました。
個人ごとに、最低日常生活費用に加えて、ゆとりある老後生活をおくるための費用を想定する必要があります。
ゆとりある豊かな年金生活期を実現するためには、個人ごとの対策が求められているということではないでしょうか。

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