年齢による幸福度の推移
全米経済研究所が2020年に発表した論文(注)によると、人生における幸福感が最も薄れるのは先進国で47.2歳、発展途上国で48.2歳です。世界132カ国における幸福感と年齢の関係を調べると、幸福感の度合いは中年層が最も低い「U字カーブ」を描くとしています。賃金の多寡や寿命の長さとは無関係に、幸福度はU字カーブを描くと指摘します。
その後、中年期を過ぎて高齢期に入ると、幸福度は再び徐々に増加するという研究結果になっています。
(注)全米経済研究所(NBER)が発表した米ダートマス大学デービッド・G・ブランチフラワー教授の論文(Is Happiness U-shaped Everywhere? Age and Subjective Well-being in 132 Countries)
日本人の幸福度に関する分析 ●年齢と幸福度の関係
アメリカとの対比にみる、日本人の年齢による幸福度の推移を図からみてまいります。

「年齢については、年齢が高い人のほうが不幸であるが、これまでの諸外国における調査では、年齢と幸福度の間に、U字型の関係があるとの結果が出ているものが多い。
つまり、若者と高齢者は、熟年層よりも幸福だというのである。その理由としては、熟年層に入る頃には、自分の人生がある程度定まってくるので、人々は若い頃持っていた野心を実現することを、あきらめざるを得ないから幸福度が下がる。その後の高齢期に入ってからは考え方を変え、後半の人生を楽しく充実させようと努力するから幸福度がまた高まるのではないかとの考察がなされている。しかし、今回の推計ではU字型にはなっておらず、67歳を底にして79歳にかけて幸福度はほとんど高まらないL字に近い形状を取っており、アメリカの結果と比べてもわが国は特異と言える」
(出典)平成20年版国民生活白書(2)「日本人の幸福度に関する分析(3)分析結果に基づく考察 ●年齢と幸福度 第1-3-5図日本人の幸福度は高齢になっても上昇しないp.61
日本人に関する分析結果では、日本人の幸福度は、高齢期になっても上昇しません。中高齢期に入ってもU字型になっておらず、幸福度はほとんど高まらないL字に近い形状を取っています。
「幸福度は属性や置かれている状況に影響を受ける」としながら、日本人の「幸福度にマイナスの影響を及ぼす要因」では、
● 年齢が高いこと
● ストレス症状が高いこと
● 失業中であること
が挙げられています。
「日本人の幸福度に関する分析」の内容からみると、中年期以降の「年齢と幸福度」の関係に特徴があります。日本人は、年齢が高いほうが不幸だと感じています。日本で社会の中枢を占めるであろう、幸福度の低さの問題については、たびたび指摘されてきました。
中年期以降は自分の人生がある程度固まってくるので、夢を叶え、富や成功を手に入れることをあきらめざるを得なくなります。将来への展望を、若い頃からの延長線上に描くことが難しくなります。サラリーマン生活のストレスから、それまでの暮らし方に行き詰まりを感じ、若い頃に感じていた幸福度は低下したと考えられます。
アメリカのケースとの対比でみると、将来への心の持ちようによっては、主観的な幸福度を高めることも出来ると考えます。
組織の多様化、雇用環境の変化を背景に、個人が主体的にキャリア形成を進めることを後押しする傾向にあります。個人がキャリアを自律させる意識を持つことで、幸福感を高めることができるのではないでしょうか。
世間の評価や評判を気にし、自らの価値観を人と刷り合わせたり、比較したりすることは無用なストレスを生む原因となります。自分の課題に気づき、自分の課題に集中する必要があります。人を変えることではなく、自分が変わることで、自分を取り巻く世界を変えていくことができます。
組織の生活の中で失われがちな、個人としての自分を取り戻すことです。素の自分に戻って将来を考えることが出来れば、素の自分を表現する場として、未来を志向することができるのではないでしょうか。
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