真の個性化は、どうして中年期以降に始まるのか?
- 山木戸啓治
- 7月26日
- 読了時間: 3分

(出典)C・G・ユング著 鎌田輝夫訳「総特集ユング 人生の転換期」p.50-52 (現代思想』第七巻第五号青土社1979年4月)
心理学者ユングは、人生を一日の太陽の動きにならって、人生を水平線から昇り、軌道を描く太陽の動きにたとえました。
ライフサイクルには、成人期から中年期への転換期があります。ユングはこの時期を人生の午前から人生の午後への転換期と考えました。中年期には人生の午前に持っていた意識を転換する必要があるということです。人生の午後には中年期に見合う働き方・暮らし方を見出すために、組織の中で活動するために排除してきたものを見つめ直します。自分らしい自分を取り戻して、素の自分に戻ろうとする過程をたどることから、本来の素の自分が得意とする分野に気づきます。個人としての自分を取り戻して素の自分に戻ることから、真の個性化は人生の午後に始まります。正午に向かってぐんぐん光の強さを増していく午前の太陽と、午後の太陽とでは存在は同じでも、輝きは異なったものに見えます。
ユングは人生も午前と午後では、意味が違うのだといっています。
真の個性化が始まる前にこれまでたどってきた人生行路がずっと続くわけではないと気づき、不安や焦りを感じる過渡期があります。過渡期には次の精神的な発達段階に進むために、これまで抱いていた価値観や、人生の優先順位を転換し始めることになります。
企業の人材育成に関しても、従来型の組織主導から社員の自律的なキャリアの転換が必要になっています。企業の人材戦略の転換の変化に対応するために、キャリアを自分で考える自律性が求められています。
人生の午後を迎えて局面の変化に応じて、目標を絞り込まざる得なくなります。素の自分を取り戻して時間を忘れて没頭できる、自ら絞り込んだ目標にどのように取り組んでいくかに集中します。
真の個性化は精神的な成長からもたらされ、自らを自己実現へと導きます。自分らしい自分を取り入れた生き方を目指すことにより、主観的幸福度が上昇することから、自己実現の可能性は人生の後半にあります。
40歳~55歳の中年期を展望します
年齢を重ねるにつれて価値観、ならびに自らの強み弱みが明確になってきます。何に対して心を動かされるのか、何に情熱を感じるのかに気づきます。自分の強みをどう生かすのかについて考え、自己実現への道を模索し始めることになります。
人と比べることなく自分の強みや可能性を磨いて生きるという意味で、自己実現を図ることができます。積み上げてきた過去を土台にして、自分を表現するための場として、将来を志向して、自己実現への個人的努力を心掛けます。
その過程を経て人生の午後には自らのライフスタイルに沿って、与えられたミッションを見出すことができます。見出したミッションに沿って、歩みをとめることなく進むことができれば、精神的な健康を維持し幸福感を持つことができます。ゆとりある生活を送る中で、自らのライフスタイルに沿って自律して活動します。その上でおだやかに暮らしをいとなむことで、生きがいを感じ取ることができるのではないでしょうか。
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