FRBが金融政策で、最も重視しているPCE価格指数とは?
- 山木戸啓治
- 4月11日
- 読了時間: 6分
更新日:4月11日
米国の経済動向を知ることは、日本企業の業績見通しを知る上で、重要な要素となります。日本企業の業績見通しも、米国の経済動向が前提となるからです。米国経済の想定以上の変調があれば、日本の株価の大幅な変動要因となる可能性があります。
米国のPCE・コアPCE(個人消費支出)価格指数 前年同月比

(出典)米国商務省経済分析局
米国商務省経済分析局公表のPCE(個人消費支出)は、米国の個人消費者が実際に使った金額にもとづいて集計されます。GDP構成比率の約7割を占める個人消費の動向を表していることから、市場参加者の関心が非常に高いデータです。
生鮮食品と外的要因に左右されやすいエネルギー価格は、変動幅が激しいので2つを除外したものをコアPCEとしています。生鮮食品やエネルギーを除いた数値が上昇していれば、単なる価格のブレではなく物価上昇が進んでいると考えられるからです。
コアPCE価格指数の上昇率は2021年4月に目標の2%を上回り、2022年2月にはコアPCE価格指数は前年同月比で+5.6%上昇しました。この時の上昇率は第二次オイルショックの1982年1月以来、約40年ぶりの高水準でした。高水準となっていたコアPCE価格指数は、イラン戦争前の2026年2月のデータですが、低い水準に落ち着いています。
直近3カ月のコアPCE価格指数は、2025年12月前年同月比で2.97%の上昇、2026年1月3.05%の上昇、2月2.97%の上昇となっています。
瞬間風速を示す前月比のデータでは、2025年12月前月比+0.33%、2026年1月+0.39%、2月+0.37%上昇となっています。
総合指数であるPCE価格指数の直近3カ月は、2025年12月前年同月比2.88%の上昇、2026年1月2.83%の上昇、2月2.80%の上昇となっています。
瞬間風速を示す前月比のデータでは、2025年12月前月比+0.33%、2026年1月+0.30%、2月+0.38%の上昇となっています。
経済的な不確実性が高まる中、家計が消費よりも貯蓄に資金を振り向けていることが背景にあるとみられます。長期目標である2%と比較するとやや高い水準にあります。
2023年3月頃から総合指数であるPCE価格指数とコアPCE価格指数の前年比が逆転しています。「逆転」は珍しい現象で食品・エネルギー価格の変動が大きいため、総合指数の方がコアより高くなる局面が多いとされています。背景にはエネルギー価格の下落と食料価格の鈍化が、総合指数を下落させています。
コアPCEを構成する財(Goods)価格の全体は、横ばいで落ち着いた水準となっています。
サービス価格は前年比 +3.5% で、特に住宅サービス(家賃)は前年比約+6%上昇で、コアPCE全体の伸びを上回る水準となっています。
サービス価格が3%台にとどまっている限り、インフレは完全には収まっていないという評価になります。
サービスの価格はほぼ人件費で、コストの中心が人件費です。サービス価格が下がりにくい理由は、人件費にあります。人件費は一度上げると下げられない性質を持ち、一人あたりの賃金水準は下がらない傾向があります。賃金インフレが続く限り、サービスインフレは居座り、価格は上がったまま維持されます。供給制約が解消しても、サービス価格は高止まりする傾向にあります。
米国でPCE価格指数が重要だとされるのは、FRBが金融政策の決定の際のデータとして重視しているからです。FRBが開くFOMC(米連邦公開市場委員会)は、半期に一度「金融政策報告書」を米議会に提出することが義務づけられています。2000年に議会に提出した半期報告書からインフレ予測に使う価格指数をCPIからPCE価格指数に切り替えました。
2012年1月にFOMCは長期の目標および政策戦略の中で、PCE価格指数の前年比2%上昇をインフレの長期的な目標水準にするとしました。FRBは物価に対して特定の長期的な目標を置くこととし、それをPCE価格指数の前年比2%の上昇としています。米国の金融政策の行方を占うためには、不可欠なデータと捉えられています。FRBはFOMCが公表する「経済予測」の中でも、インフレの見通しにPCE価格指数を使用しています。
値動きが激しい生鮮食品と外的要因に左右されやすいエネルギー価格は変動幅が激しいので、2つを除外したものをコアPCEとしています。生鮮食品やエネルギーを除いた数値が上昇していれば、単なる価格のブレではなく物価上昇が進んでいると考えられるからです。
物価を表す指標としては、PCE価格指数とCPI(消費者物価指数)の2つの指標があります。FRBは金融政策運営で、中でもPCE価格指数をもっとも重視しています。PCE価格指数を重視する理由は、CPIに比べて広範囲の物価動向を反映し、家計の実際の消費の変化を映すからです。家賃などの影響を強く受けるCPIより物価の実態に近く、よりブレを抑えて物価動向をとらえられます。CPIは食品、住居費、交通費、医療費など生活のほぼ全般を対象にします。PCE価格指数は、更に公的な医療制度または保険などを通じて、国あるいは企業側が支払った医療費などまで含みます。どの品目を指数にどう反映させるかの判断を毎回調整できるなど、消費の変化にもより柔軟です。
米国のCPI・コアCPI(消費者物価指数)前年同月比の推移

CPIは、労働省労働統計局(U.S. BUREAU OF LABOR STATISTICS)が毎月第2週目の木曜日に発表する統計指標です。家計収支の変化を毎月反映するので、一般の消費者が購入する商品とサービスの価格を反映しています。人口の約90%を対象とする全都市消費者物価指数(CPI for All Urban Consumers)が使用されています。都市部に住まう生活者の生活コストの変化を把握するのが、主な目的となっています。商品やサービスの価格がどう変化したかを調べる指数なので、実際の景気よりも数か月~半年ほど遅れた数値が出てきます。CPIが「店頭の値札」を集計した指標であるのに対し、PCE価格指数は「家計の実際の支出」を集計した指標と捉えられます。
全体の動きを表す通常のCPIを総合指数と言います。コアCPIは総合指数から、生鮮食品とエネルギーを除いた指数です。生鮮食品は天候により数値が大きく変わり、エネルギーは海外情勢の影響を受けるためコアCPIでは、生鮮食品とエネルギーを除外します。コアCPIは総合指数よりもさらに実際の消費者の体感に近いものとなっています。
現状は2022年2月のピークの+5.6%から比較すると大幅に低下しています。
直近の3カ月のコアCPIの推移をみますと、2026年1月に前年同月比+2.51%の上昇、2月+2.47%の上昇、3月+2.60%の上昇です。
瞬間風速を示す前月比のデータでは、2026年1月に前月比+0.30%、2月+0.22%、3月+0.20%の上昇でした。
直近3カ月の総合指数のCPIの推移を見ますと、2026年1月に前年同月比+2.39%、2月+2.43%、3月+3.29%の上昇です。
瞬間風速を示す前月比のデータでは、2026年1月に前月比+0.17%、2月0.27%、3月0.87%の上昇でした。
3月のCPI は、インフレが再加速したことを示す非常に特徴的な内容です。イラン戦争によるエネルギー価格ショックで、ガソリン価格が21.2%の上昇と歴史的な急騰を見せた点が決定的です。
インフレ再燃の主犯はエネルギー価格で、コアはまだ安定しているという「二層構造」が特徴です。


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